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『10年後、2027年のIoTビジネスで成功する施策』続:IoT 先行企業の狙いを見極める。|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、Dunyaturuソリューションズをご利用ください。

特集・コラム

第2回 インダストリー4.0のイニシアティブを握りつつあるドイツ 第2回 インダストリー4.0のイニシアティブを握りつつあるドイツ

 製造業のIoT、「つながる工場(スマートファクトリー)」の実現を掲げるドイツの動きが加速しています。これまでは、センサーやコンピュータなどを設備や機器などに組み込んでデータを収集する基礎技術に注力していましたが、ハノーバーメッセ2016ではサプライチェーン全体に跨るような生産実装ラインの展示がドイツ企業の展示で多く見られました。
 センサーの機能や、画像データの解析といった要素技術はもちろん重要ですが、最終的には、これらを組み合わせて「つながる工場」を構築して、ここで優れた製品を生産できなければ、絵に描いた餅です。
 日本企業の現状は、機能や精度は高いけれど5年前、3年前のドイツの取り組みをそのままなぞっているだけに見えます。高性能高品質な部品作りには長けていても、インパクトのある製品作りには滅法弱い日本企業が今こそ考えなければならないテーマは独自性ではないでしょうか。

インダストリー3.Xまで来たドイツ、要素技術から実装ラインへ駒を進める

 「インダストリー4.0には届かないが、インダストリー3.6くらいには進んでいる」
 最近ドイツがインダストリー4.0(第四次産業革命)への取り組みについて表現する言葉です。ここに、その自信の現れを見て取ることができます。ドイツが自信を見せる理由として考えられるのは、具体的な実装ラインでいくつか事例ができたことや、そのユースケースを横展開できる状況になっていることがあげられます。変革のスピードは、今後さらに加速すると思われますが、先へ進むことができる企業と脱落していく企業の明暗がはっきり分かれると思われます。

 JETRO(日本貿易振興機構)が発行している月刊誌ジェトロセンサーの2015年9月号には、ドイツからの調査レポートでインダストリー4.0に対するメリットとデメリットの調査レポートが報告されています。メリットとしては、「生産工程の品質的改善」「生産コストの低下」「生産能力の上昇」などがあげられていて、期待通りの成果を上げていることがわかります。逆にデメリットとしては、「高い投資コスト」「複雑なテーマ」「専門人材不足」「データ保護」などがあげられていて、ものづくりにITを融合するというテーマの難しさと、この取り組みが必ずしも全ての企業で上手く行っていないことを示しています。特に、システムやIT人材育成への投資負担は大きく、中小企業には重い負担となっているようです。ドイツ政府は、既に1億ユーロ(約1兆2,000億円)以上の投資を行っていますが、それでも投資コストに見合った効果が得られていないケースがあるようです。

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 IoTに取り組めばどの企業でも成果が得られるはずがなく、成功できるのは限られた一部の企業だけなのは当然のことです。先行しているドイツ企業の現状は、これからIoTに取り組もうとしている日本企業の参考になるでしょう。肝に命じておくべきことは、「IoTに取り組む誰もが成功を手にするわけではない」という現実です。日本では、「我が社もIoTに取り組んで結果を必ず出す」と言い切る経営者や事業責任者が少なからず居るようですが、IoT導入による効果や具体的な目的、ビジョンが無いままに取り組みを指示するケースが後を絶ちません。先行する事例を真似しただけでは、とても勝ち残れるとは思えません。
 例えば、IoTの事例としてよく紹介されている建設機械業界を見れば分かるように、コマツと同じことができてもユーザー企業はそれを評価してはくれません。それどころか「今更コマツの真似をして、同じIoTを実現してなんの価値があるのだろうか」、これが市場の見方です。コマツとは全く異なる新しいソリューションを作る必要があります。ユーザー企業や市場が、ひと目見てわかるような独自の強みを製品やサービス化して提供しなければならないのです。先行事例の真似から取り組むとして、その先を考えておくべきでしょう。

ドイツのめざす長期戦略とドイツの行く手を阻む存在

 ドイツや米国が取り組んでいるIoTプロジェクト計画のゴールは、2025年~2030年に設定されています。多くの計画書では、長期戦略の目的やビジョンが描かれています。
 最近の自動車産業では自動運転に対する取り組みが注目されていますが、ほとんどの大手自動車メーカーは2020年に自動運転車を市場投入すると言っています。つまり、自動運転車が市販車として誰でも購入できるまでわずか3年しか掛かりません。自動車産業がめざしているインダストリー4.0は、2025年や2030年を想定しているので、自動運転車はIoT技術を使った製品開発の通過点に過ぎないことがわかります。
 目先の目的はゴールではなく、その先の長期の目的を自ら策定して、先行する企業や競合他社の先をめざした取り組みが求められています。先行する成功事例は単なる通過点であり、先行企業が3年掛かって実現したのであれば、これを1年程度で追いつくことが可能だと考えます。長期の目標と実行スピードこそIoTビジネスが成功する秘訣です。たとえ失敗しても素早く方向転換して遅れを取り戻せればなんの問題もありません。
 ドイツの強みは、テクノロジーだけではなく、長期目標に取り組むタフな発想力や、要素技術を組み合わせて実装ラインを構築できる機敏で柔軟なエコシステムが整ってきていることにあると思われます。

 日本から見ると大きく先行しているドイツですが、ドイツの行く手を阻む国が3つあります。
 1つ目は、強力なIT企業を多数持つ米国です。米国における製造業のGDP比率は約1割とドイツの3分の1です。IoTも製造業だけではなく、運輸、ヘルスケア、エネルギー、社会インフラなどの分野へ展開を広げています。
 2つ目は、米国に次いで大きい市場を持つ中国です。ドイツと中国は戦略的提携関係にありますが、最近中国企業は相次いでドイツの先端企業を買収しています。産業用ロボット世界シェア第2位のクーカ社(KUKA AG)は、中国家電大手の美的集団(ミデア・グループ)が買収を発表。今更ながら、こうした動きにドイツは神経質になっています。ドイツ政府は、ドイツ化学技術企業の買収を制限する法改正に着手する見通しだと報じられています。
 そして、3つ目が日本です。日本は製造業に強くドイツと似た産業構造です。熟練した技術者も多く、そもそもインダストリー4.0の脅威として名ざしされた国の1つです。しかし、日本は自前主義(クローズド:閉鎖的)から脱却できず、国内で競合する企業同士が狭い領域で戦っています。グローバル市場とその強豪に目を向けている日本企業はまだ少ないようです。この構図は、幕末の日本によく似ているように感じるのは気のせいでしょうか。
 米国、中国、日本の3つの国が、ドイツが現在気にしている国ではないかと思います。

テクノロジーとハードウェアではなく、オープン・イノベーションによるエコシステム

 長期戦略に沿って着実にインダストリー4.0に取り組み成果を上げるドイツですが、日本企業はその理由をテクノロジーやハードウェアにあると思い込んでいます。そして、シーメンス社やボッシュ社などは、インダストリー4.0の先行企業として既に成果を出しつつあります。
 成功事例を調べ尽くした日本企業の担当者は、必ずその成功要因は技術と実績だと言います。そして、調査報告のまとめに、「ドイツよりも短い時間で、同じものを実現することは可能である」というコメントが書かれています。確かにテクノロジーで日本が実現不可能は無いと思います。それどころか、ドイツよりも遥かに上のレベルの技術もあります。ドイツが実現した事例は、日本企業で思った以上に簡単に実現することができるでしょう。しかし、IoTで勝ち残るためにはドイツを超える必要があります。そしてこれは、市場ルールが変わったり、日本が孤立したりしないという前提の上に成り立ちます。

 自動車産業を例として、この考え方の問題点を考えてみたいと思います。
 ドイツの完成車メーカーには、フォルクスワーゲン社、ダイムラー社、ポルシェ社、アウディ社、BMW社など日本と同様に多数のメーカーがあります。しかし、注目すべきは完成車メーカーではなく、大手部品メーカーにあります。その中でも特にドイツ3大部品メーカー(ボッシュ社、コンチネンタル社、ZF社)の最近の買収や事業再編の動向に目を向ける必要があります。
 自動車産業が、IoT/インダストリー4.0を主導する産業なのは言うまでもありませんが、これを支えているのが3大部品メーカーです。最近は、ハイブリッド車や電気自動車といった次世代自動車や、自動運転技術に必須となる車載電子部品やセンサー、リチウムイオン電池、ソフトウェアやシステム関連企業の買収に動いています。逆に、汎用エンジンやバルブ製造など非自動車関連事業の売却や分社化を推し進めています。既に欧州メーカーの自動車は、メーカーに関係なく6割以上の部品のモジュール化、共通化が進んでいます。系列化されている日本の自動車メーカーより、部品調達コストを安く抑えて性能の良い自動車を作ることができると言われています。日本でも、系列を超える部品メーカーも増えてきていますが、ドイツのような状況に至るにはまだ時間が掛かると思われます。
 フォルクスワーゲン社によるディーゼルエンジンの排ガス不正は、ボッシュ社が提供した部品とソフトウェアによるものだと公表されていますが、同じ部品を使うアウディ社やダイムラー社でも同様の操作が行われていたという報道もありました。つまり、ドイツの自動車産業を主導しているのは大手部品メーカーにあるという見方もできるでしょう。これは、PCの生産と同様です。PCメーカーは、モジュール化、共通化された部品を揃えて組み立てるだけの存在となり、最終製品を作っているにも関わらずその業績は低迷しています。

 さらに、Uberなど自動車のシェアリングという新しいビジネスモデルが登場したことで、これまでの自動車産業の構造が大きく揺らいでいます。ユーザーは、目的と用途に合わせて自動車を買い換えるのではなく、他社とシェア(共有)して同様のニーズを満たすことができます。自動車を所有するよりも共有する方が、遥かに安いコストで同じ結果が得られます。これまでの自動車産業のビジネスモデルが変わりつつあります。

 需要が一巡して自動車販売台数の成長が止まった中国やアジア新興国市場では、アフターサービスやタイヤなど消耗品の市場成長が見込まれていて、この市場を獲得する手段としてIoT活用が大きな役割を果すと期待されています。
 ドイツと日本の大きな違いは、複数の完成車メーカーは競合関係にありますが、部品メーカーはオープンで部品のモジュール化と共通化が進んでいることです。消耗品や修理部品は安価で簡単に入手できます。次世代自動車開発についても、こうした仕組みがさらに進んで、働いてメーカーごとに別々に技術投資するのではなく、オープン・イノベーションによって基本技術は共同開発しています。最終製品の完成車でのみ競争するという構図で、「協業と競争の境界線が明確で、米国や日本などメーカーには協力して対抗する」という仕組みです。ドイツが、国際標準でイニシアティブを握りたいと考える理由がここにあります。

鍋野 敬一郎 氏の写真

鍋野 敬一郎 氏

株式会社フロンティアワン 代表取締役
ERP研究推進フォーラム講師

1989年 同志社大学工学部化学工学科(生化学研究室)卒業
1989年 米国大手総合化学会社デュポン社の日本法人へ入社。農業用製品事業部に所属し事業部のマーケティング・広報を担当。
1998年 ERPベンダー最大手SAP社の日本法人SAPジャパンに転職し、マーケティング担当、広報担当、プリセールスコンサルタントを経験。アライアンス本部にて戦略担当マネージャーとしてSAP Business All-in-One(ERP導入テンプレート)立ち上げを行った。
2003年 SAPジャパンを退社し、コンサルタントとしてERPの導入支援・提案活動に従事。
2005年 独立し株式会社フロンティアワン設立。現在はERP研究推進フォーラムでERP提案の研修講師、ITベンダーのERP/SOA/SaaS事業企画や提案活動の支援、ユーザー企業のシステム導入支援など、おもに業務アプリケーションに関わるビジネスを行っている。
2015年よりインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI):サポート会員(ビジネス連携委員会委員、パブリシティ委員会委員エバンジェリスト)

鍋野氏寄稿ムック 丸わかり!! IoT入門の写真

鍋野氏寄稿ムック

丸わかり!! IoT入門

出版社: 洋泉社 (2017/2/16)

家電や自動車、住宅、ロボット、工場など身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながる――。
IoT(モノのインターネット)によって、10年後の私たちの暮らしやビジネス、産業構造は、大きく変わるでしょう。
第4次産業革命と呼ばれる「IoT」を徹底解説するビジュアルムック。

鍋野氏寄稿ムック インダストリー4.0の衝撃の写真

鍋野氏寄稿ムック

インダストリー4.0の衝撃

出版社: 洋泉社 (2015/7/24)

製造業に押し寄せる新たな波「インダストリー4.0」――。
生産システムがつながる「スマート工場」の登場により、生産現場、サプライチェーン、われわれの暮らしはどう変わるのか!?
インダストリー4.0の立役者ヘンニヒ・カガーマンはじめ、日本GE、経産省のインタビュー、専門家の論考などにより、21世紀の新産業革命を多角的に読み解く。

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