サービス化における「顧客価値」と「利益」の同時獲得|サービスと収益化は表裏一体|川上 昌直


製造・流通・通信業向けビジネスナレッジ

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第2回 サービスと収益化は表裏一体

 大切なことは、よいモノをつくることではなく、なんらかの状況下で顧客の用事を解決すること。モノづくり(製造業)、モノうり(小売業)、モノはこび(物流業)は、その用事を解決する際の一部を担っています。しかし、単純に既存のサプライチェーンやバリューチェーンを再度検討するということでは、顧客価値も収益も創造できなくなりつつあります。企業目線であることに変わりないからです。

 そこで今回は、顧客目線でサービスを構築し、収益化を狙うための考え方を示します。

その顧客接点は「顧客目線」か?

 顧客価値の提案が、ビジネスにおいてもっとも重要な目的であることは前回述べたとおり。ではあなたの企業が、モノから一歩踏み出て「○○という状況の△△に、□□という解決法を!」という価値を提案したとしましょう。すると次は、それをどのように実現していくのかが問題になります。

 実際に顧客価値提案を立体化する際に役立つのが「顧客接点」です。タッチポイントや、コンタクトポイントとも呼ばれています。顧客接点は、読んで字のごとく、顧客との接点です。そう言われると、モノそのものや、パッケージ、あるいは看板や接客、それにWEBページなどを想起しがちです。しかしそれはあくまでも企業目線での接点。

 顧客価値は、顧客が感じる支払い意欲がベースになります(第1回参照)。つまり、価値は顧客が決めるのです。そうなると、顧客接点は、顧客がどんな状況でなにかのサービスを雇い、さらにそれを解決し、、、という顧客を主語にした活動をベースにしたものが、本当の顧客接点と言えます。

 このような顧客の活動を想定するための方法はいろいろあります。有名なものでは「カスタマージャーニーマップ(CJM)」や、あるいは「消費チェーン」などと呼ばれるものがありますが、ここではよりシンプルかつ、購買後も含めた顧客の活動を補足するために、わたしが2013年に提唱した「顧客の活動チェーン」を紹介します。

図 顧客の活動チェーン

(出所)川上著[2013]『儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書』かんき出版

図 顧客の活動チェーン

 わたしたちがものを購入するのは、なんらかの用事を解決し、できればその状況を継続したいと考えるからです。活動チェーンでは、それを大きく3つのステージに分けています。まずは、顧客が問題を認識してから購入にいたるまでの購入ステージ、次に購入後それを活用して用事を解決するまでの用事解決ステージ、最後に用事を解決し終えてその商品を卒業し、アップグレードまでにいたる継続ステージです。

 この一連の顧客接点を眺めれば、これまで多くの企業が力点をおいていた「購入(企業にとっての販売)」以降にも、顧客は多くの活動をしていることがわかります。顧客目線に立ち、そうした活動に手当をしてはじめて顧客に寄り添っていると言えるのです。あなたのビジネスは、どこまで顧客に寄り添えていますか? 残念ながら、多くが放置されていないでしょうか。特にモノづくり企業にとっては、そうでしょう。サービス化の視点は、業態にかかわらず、今以上に顧客に寄り添うために必要なのです。

利益から眺める顧客接点

 活動チェーンは、顧客に寄り添ううえでも私達の視野を広げてくれますが、それ以上に大きなメリットがあります。それは、顧客接点を課金、ひいては利益の観点から眺めることができることです。

 今度は活動チェーンを課金から眺めてみます。すると、世の中では同じようなソリューションを提供しつつも、全く違うところで利益を得ているビジネスが存在していることが見えてきます。たとえば、古くからあるコーヒーメーカーと、ヒットしたネスカフェバリスタ(インスタントコーヒーでカプチーノが飲めるマシン)とは平たく言えば同じようなソリューションを顧客に提供しているかのように見えます。

 しかし、課金ポイントが全く異なっているのです。コーヒーメーカーはマシンを作り込み、顧客に購入してもらえば利益がでるようになっています。つまり購入ステージでの利益獲得です。他方で、バリスタはマシンではなく、それを使ってもらうことで利益を得ようとしています。それもそのはずで、バリスタを世に送り出したネスレジャパンは、インスタントコーヒーをスタバライクに消費してもらうために、あえてマシンを作っています。そのため、マシン販売では利益を期待せず、用事解決ステージで多くの利益を回収するというマネタイズ戦略。さらに圧巻なのは、顧客がバリスタの味に飽き足りてくれば、ネスレがグローバルで展開するネスプレッソにアップグレードします。そしてそこでも同じように、本体をお手頃に提供し、カプセル販売で儲けるというプロセスがあるのです。

その顧客接点で収益化するかしないかがビジネスモデルを違わせる

 このような事例は他にも多くあります。ゲーム専用機を販売してきた企業では、そもそも本体価格のマージンを薄く、ソフトのマージンを厚く取るという、いわばカミソリの刃やプリンターのような独特のマネタイズ戦略を、1980年代からとっていました。活動チェーンで言うならば、いわば「購入」ではなく「使う」という顧客活動での利益回収。これに対して、無料ゲーム陣営は、本体(携帯・スマホ)からはもちろん、ソフト(アプリ)からも課金をしませんでした。さらに課金ポイントを遅らせて、「マスター」するときに、ゲームを有利に進めるという活動で課金をしたのです。そしてそれが思いのほか多くのユーザーの関心を集め、既存のビジネスモデルを覆したことは記憶に新しいでしょう。

 さらに、課金を遅らせるプレイヤーも現れます。アイテム課金もそこそこに、ゲームの世界からさらに「アップグレード」して、そのキャラクターを知財(IP)化させるまで利益回収を遅らせるサービスです。たとえば、角川ゲームズが開発してDMMが配信する「艦隊これくしょん」ではゲームを楽しんだユーザーをファンにして、小説など別のポイントで課金をするようデザインされていました。つまり、ゲームで世界観の虜になって、他のプロダクトを消費するタイミングで課金をするというやり方です。

イメージ

 このように、近年では、既存の勝ちパターンを覆し、業界構造を変えるビジネスが生まれてきています。それらは、一見同じような顧客価値を提案しながらも、顧客接点を多く取り、さらには課金ポイントをずらしているのです。そうした動きは、「購入=販売」時点でソリューションを完結させようとすれば当然に見えてきません。

 そして、購入以降の活動に寄り添うためには、「サービス化」の拡充が必要になるのです。サービス業であってもオペレーション効率を考えて「手離れのよい業務」を優先しているところは危険です。顧客接点を長く取り、顧客に寄り添えば、どこかで他社と異なる課金ポイントが見えてきます。かつては、コスト的にそれをするのが困難であったのは事実です。しかし、現在はテクノロジーの発達、具体的にはデジタルマーケティング、IoTやAIの発達によって、こうした取り組みが手軽にできるようになっています。言い換えれば、サービス化と、顧客への寄り添いが低コストで実現可能になっています。後発の新興企業が、破壊的イノベーションを起こしていることから、この点は明らかでしょう。

 既存の大企業こそ、顧客の活動を十分に認識し、マネタイズのずらしを検討して見る必要があるといえます。

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川上 昌直 氏

博士(経営学)
兵庫県立大学 経営学部 教授
ビジネス・ブレークスルー大学・大学院 客員教授

「現場で使えるビジネスモデル」を体系づけ、実際の企業で「臨床」までを行う実践派の経営学者。初の単独著書『ビジネスモデルのグランドデザイン』(中央経済社)は、経営コンサルティングの規範的研究であるとして第41回日本公認会計士協会・学術賞(MCS賞)を受賞。ビジネスの全体像を俯瞰する「ナインセルメソッド」は、さまざまな企業で新規事業立案に用いられ、自身もアドバイザーとして関与している。また、メディアを通じてビジネスの面白さを発信している。
そのほかの著書に『儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書』(かんき出版)、『そのビジネスから「儲け」を生み出す9つの質問』(日経BP社)、『ビジネスモデル思考法』『マネタイズ戦略 顧客価値提案にイノベーションを起こす新しい発想』(ダイヤモンド社)、など。

連載目次

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第2回:サービスと収益化は表裏一体

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