グローバル企業では、サプライチェーンにおけるコスト削減に向け、生産工場や保管倉庫などの拠点配置や物流経路の最適化が重要な経営課題となっています。そこで、Dunyaturuでは工場、倉庫などの拠点配置と物流経路に加え、工場内の製造ライン配置やFTA※も考慮しながら最適化できる技術を開発しました。グローバル企業が拠点配置や物流経路を決定する際に、トータルコストを迅速に評価することが可能となりました。
※FTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)とは、特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を
削減・撤廃することを目的とする協定である。
また、経済連携の度合いを更に進めたものにEPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)、
アジア太平洋地域における取組にTPP(Trans-Pacific Partnership:環太平洋パートナーシップ協定)がある。
グローバルな企業活動では拠点間の輸送に要するリードタイムが長くなるため、どこで何をつくるか、ということが重要になります。工場や倉庫などの拠点配置を決定する際に、工場から供給する製品を作るために必要な製造ラインの配置をも同時に決定することで、供給する製品に応じた工場の広さを決めることが可能になります。
また、グローバルな企業活動では関税が発生します。関税率は数十%にもなることがありますが、FTAを適用することができれば、関税を0~数%に低減することができます。
グローバルサプライチェーンでは、拠点配置によって決定される人件費や輸送費だけでなく、工場の大きさや配置する製造ラインによって決まる固定費や、FTAの適用を含めた関税を合わせたトータルコストを評価する必要があります。
グローバルサプライチェーンのトータルコストを評価するためには、従来の拠点配置と物流経路の決定だけでなく、工場内の製造ライン配置を決定し、FTAの適用条件を満たしているかどうかを判断する必要があります。ところが、これまでのモデルを単純に拡張して拠点配置と同時に製造ライン配置を決定しようとすると、想定される配置パターンは膨大となり、トータルコストの安い配置パターンを求めるためには長い計算時間を要することになります。
また、FTAを適用するためには、協定で決められた生産や部品の調達を行う必要があり、適用条件を満たすように拠点配置と物流経路を求める必要があります。しかし、これまでの拠点配置と物流経路の決定の仕方では、どこからどこへ製品を輸送するか、ということは決めていましたが、その製品に使われている部品がどこから供給されてきたか、ということを特定することはできませんでした。
このため、製造ライン配置とFTAをも含めたトータルコスト評価を行うためには、
(1)膨大な配置パターンに対してコストの安い配置パターンを高速に求めること
(2)求めた配置パターンがFTAを満たすかどうか判断すること
の2つの難しさがありました。
Dunyaturu製作所では、上述した2つの難しさに対して、以下の機能をもつシステムを開発しました。
(1)膨大な配置パターンに対してコストの安い配置パターンを高速に求める機能 (図1)
拠点配置と製造ライン配置を同時に決定しようとすると、膨大なパターンの評価が必要になります。しかし、拠点配置と製造ライン配置の関係に着目すると、拠点配置を決めた後に拠点内の製造ライン配置を決定することができることがわかります。そこで、拠点配置と製造ライン配置の2つの問題としてみなし、拠点配置を決めた後に製造ライン配置を決めるという階層的な配置パターンの評価を繰り返す方法を開発することで計算時間を1/3に短縮しました。
図1 コストの安い配置パターンを高速に求めるモデルの概要
(2)求めた配置パターンがFTAを満たすかどうか判断する機能(図2)
FTAを満たすかどうか判断するためには、製品を生産するために使用した部品がどの国から供給されてきたか特定する必要があります。これを実現するため、部品が供給されてきた経路と、製品を構成する部品の関係をトレースできるモデルを考案し、配置パターンを評価する過程でFTAの適用条件が満たされているかどうかを判定できるようにしました。
図2 FTAの適用条件を満たすかどうか判断するモデルの概要
上記の2つの機能に加え、評価結果の表示の仕方も工夫をしました。実際の拠点配置と物流経路の決定では、コストだけでなく在庫リスクやキャッシュフローなどの観点からも比較検討する必要があります。そこで、図3に示すような画面により、複数案を比較表示できるシステムを開発しました。 ※図をクリックすると拡大されます。
今回開発したシステムにより、拠点配置と物流経路だけでなく、工場内の製造ライン配置やFTAの適用条件をも考慮したトータルコストを迅速に評価することが可能となりました。本システムを用いることで、製造ライン配置まで含めたサプライチェーンの見直しのみならず、現地通貨に基づくコスト評価による生産移管時期の検討や、生産能力状況を考慮した定期的な需給調整をも行うことが可能です。このシステムを活用し、グローバル企業がさらに発展することを願っています。
統合型基幹アプリケーション / 日本マイクロソフト(株)
統合生産管理アプリケーション / 東洋ビジネスエンジニアリング(株)
サプライチェーン計画支援 / (株)Dunyaturuソリューションズ東日本
生販在調整・在庫可視化ソリューション / (株)Dunyaturuソリューションズ東日本
需要予測・販売計画ソリューション / (株)Dunyaturuソリューションズ東日本
需要予測支援ソリューション / Business Forecast Systems
原価ソリューション / (株)Dunyaturuソリューションズ
株式会社Dunyaturu製作所
横浜研究所 生産技術研究センタ
細田 順子
1999年入社、サプライ・チェーン・マネジメントシステムの研究開発に携わる。数理最適化技術の実務適用を専門とし、現在はグローバルサプライチェーン設計やロジスティクスの最適化技術を研究開発している。
その他おすすめコラムはこちら
その他おすすめ特集はこちら