3ページ目|第8回 日本経済が変わるとき|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、Dunyaturuソリューションズをご利用ください。

明日のビジネスに役立つ!伊藤元重のよくわかる経済学“現在”を知って“未来”を考える

過剰供給体質の改善

 日本経済は1992年以来、ずっとデフレギャップを抱えてきた。つまり、マクロ的に見て大幅な超過供給体質であったのだ。途中2005年前後にこのデフレギャップが解消された時期があったが、これはこの頃世界経済が異常な過熱をしたからであり、そうした例外的な時期を除けば、日本経済は長期構造的な過剰供給構造にあるのだ。

 個別の産業を見ても、建設・土木、小売・流通、製造業、住宅関連産業など、あらゆる分野で過剰供給・過剰企業・過剰設備・過剰雇用の状況が定着している。通常の経済であれば、こうした過剰供給状況は何年かで解消される。残念ながら日本経済のように大きな構造転換点にある経済では、そうした調整はなかなか進まないようだ。
 大きな構造転換点とは、1990年頃までは高い経済成長率と人口成長の中にあった経済が、その後急速な少子高齢化と成長の鈍化に陥っていることを指している。戦後の経済成長のスピードにおいても、そして近年の少子高齢化のスピードにおいても、日本に勝る国はないのだ。

 ただ、ここでも政府の存在を強調しておかねばならない。20年近くもデフレギャップが続いたのは、政府が困難な問題を先延ばしにしてきたことも大きい。景気が少し悪くなると公共事業という建設業者支援を行い、住宅産業を支援するための住宅減税もしばしば行ってきた。エコポイント制度も家電業界や家電販売業界への支援となった。日本航空でもその経営問題が何年も前から指摘されていたにも関わらず、結局今に至るまで先延ばしの状況である。こうした業界救済策に意味がないと言っているわけではない。
 ただ、20年経ってみると、あらゆる調整が先送りされ、経済や社会に閉塞感だけが残ることになる。

 ここでも、財政状況が重要な要素となる。政府には、様々な業界を支援して、調整を先延ばしする余力があまり残っていない。自民党時代のように、様々な支援策で産業を支援する財源もなければ、政治的なしがらみも少なそうである。
 こうした政治的な変化を受けて、多くの産業で過剰供給体質を是正する動きが起きつつある。様々な業種で、倒産、廃業、吸収合併、戦略的なリストラなど、縮小の動きが健在化している。

 こうした動きは当事者にとってみれば厳しいものであるが、日本経済全体にとっては避けて通れない道である。少子高齢化で生産労働人口は相当の規模で縮小していく。グローバル化で企業の軸足が海外にシフトしていく。そうした中で、既存の産業の国内での活動の規模を縮小していくことがどうしても必要なのだ。個別企業にとっても、こうした調整に生き残りをかけることになるだろう。生き残った企業は安定的に経営基盤を確保することができるだろう。サバイバル競争と言うと厳しい面だけが強調されがちだ。確かに、淘汰と再編の過程は厳しいだろう。
 しかし、調整が終われば業界はむしろ安定的になるだろう。今のように先送りを続けて閉塞感が蔓延する状況こそ問題なのである。

経済や社会の変化の潮流を読む

 少し前に読んだ米国のある経営学者の言葉が印象に残っている。
 「政治は銅鑼や鐘を鳴らして練り歩くマーチングバンドのようなものだ。改革や変化と大声で叫ぶ。でも結局、それによって社会が大きく変わることは少ない。それに対して技術や経済は恐ろしい。世の中の片隅で起きているような小さな変化が、いつの間にか社会を大きく変える結果になっている」という。

 研究室の片隅で行われていたインターネットやパソコンの研究が、世界を変えてしまった。ごく少数のチームが開発した証券化のビジネスが世界の金融危機を引き起こした。良い意味でも、悪い意味でも、経済や技術の変化は社会を変える力を持っている。
 しかも、それは鐘や銅鑼を鳴らして「変化」と叫んで回ることはしないのだ。

 日本経済や社会の今後の変化を見通してみても、素晴らしい政治家が出て、魔法のように日本を改革するということを期待できそうにもない。もちろん政治が重要でないというのではない。政治家には選挙に勝つためだけのポピュリスト的政策だけはしてほしくない。

デジタル技術、グローバル化、先進国の少子高齢化と言った変化が、経済や社会の変化を促す重要な原動力となる。  ただ、世の中を変える原動力となるのは、経済や技術である。この連載でも述べてきたように、デジタル技術、グローバル化、先進国の少子高齢化と言った変化が、経済や社会の変化を促す重要な原動力となる。

 だからこそ、私たちは経済や社会の変化の潮流を読む力を持つ必要がある。グローバル経済の潮流は大きな変化を見せ始めている。
 そうした流れの中で日本経済はどうなるのか、企業はどのような手を打つべきなのか、そして私達個人はどういった心構えが必要なのか。なかなか難しい問題ではあるが、自分の頭で考えてみることは楽しい作業である。

 伊藤元重の『よくわかる経済学』は今回で終了となります。

 8回にわたり、明日のビジネスに役立つ経済の今とこれからについて、伊藤先生に解説していただきました。
グローバル経済の潮流が大きな変化を見せ始めている昨今、日本経済はどうなるのか、企業はどのような手を打つべきなのか、私達ビジネスパーソンは社会の潮流を読む力を養い、深く洞察することが必要になってきています。本講座が、その一助となれば幸いです。

 8ヶ月間ご愛読いただきありがとうございました。

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