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第7回 東北楽天ゴールデンイーグルス 野村克也監督 「組織の潜在能力を引き出すリーダーの言葉」|金井壽宏のモチベーション講座|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、Dunyaturuソリューションズをご利用ください。

金井壽宏のモチベーション講座
第7回・最終回 東北楽天ゴールデンイーグルス 野村克也監督 「組織の潜在能力を引き出すリーダーの言葉」

「ID野球」「野村再生工場」など、さまざまな異名を持つ野村克也監督の組織運営術。選手時代からチームの要だった野村氏ですが、監督になってからは選手の潜在能力を巧みに引き出しています。さまざまな戦略が生み出される裏側には、どうやら「野村ノート」と呼ばれるテキストの存在があり、「ささやき戦術」や「ぼやき」などに象徴される「言葉の力」がカギとなっているようです。

いつも、毀誉褒貶(きよほうへん)(誉められたりけなされたりすること)が相反する野村監督ですが、選手のやる気や、チームの潜在能力を引き出す手腕は、誰もが認めるところでしょう。特に、言葉の使い方と、背景にある考え方は、学ぶべきことが多い。
そこで、最終回となる今回は、組織のリーダー、または将来リーダーを目指す方に向けて、「言葉力」の観点から、組織のモチベーションを高める方法について考えていきたいと思います。
現在、『野村ノート』という書籍も発刊されていますから、ここから学ばない手はありません。通常なら言い難いこと、情報野球に関する持論、監督のリーダーシップなどについて書かれています。しっかり自分の考えが、理論的に構築されている点がすごいので、野村監督があまり好きでない人でも、学ぶ点があるでしょう。

書くことによって確立された「野村監督のセオリー」

私も門下にすすめられて読みましたが、野村監督の著作『野村ノート』は、ベストセラーになっているそうです。野村監督がヤクルト・阪神の監督を務めていたころに、選手の指導を目的に使用していた「ノムラの考へ」というテキスト。それが、一部の選手の間で話題となり、コピーされて広がり、野球日本代表の星野監督も使っていたことがあるとか。その「ノムラの考へ」を、野村監督自身が手を入れて整理し、完成させたのが「野村ノート」です。まさに野球界のバイブルであり、野村監督が得意としているチーム運営の教科書ともいえるものです。野球好きは基より、組織運営に頭を悩ますビジネスマンが手に取らずにいられないのも、無理はありません。

その「ノムラの考へ」が多くの選手に影響を与えたのは明らかですが、私は、そのノートが最も影響を与えた人物は、実は野村監督自身なのではないかと思っています。つまり、「書くこと」で、野村監督の人生そのものを変えたのではないかと。

野村監督の経歴をみると、大変な苦労人だったことが伺えます。経済的な理由から高校時代はバットすら自前で持つことができず、プロ野球から注目されることもありませんでした。しかし、当時の南海の監督に宛てに手紙を書き、その熱意によって入団テストを許可され、結果、辛くも辞退者が出たことで繰り上げ合格となっています。その後も、なかなか芽が出ることがなく、戦力外通告を受けたこともあるようです。

そんな野村選手が、のちのち大選手となり、名監督と呼ばれるようになった理由を考えてみました。もちろん、潜在的な素質や能力があったともいえるでしょう。しかし、それを開花させたのは、選手時代から「よく考え」、考えた結論を軸に行動し、そして検証し、成功した理由を「明確な言葉で記す」という作業を行ってきたからだと思うのです。自分の頭で考えること、考えるためには、試合結果の詳細なデータを把握すること、そして、実践につなげるつもりで考えを言語化すること、この三つが関連しあっているのです。

自分はなぜ成功したのか、失敗したケースでは何が原因だったのか、それを考えないと『一流』への道は開けない *

心理学では、自分自身に問題があるという考え方を「パーソナル・コーゼーション」というのですが、セルティックFCの中村俊輔選手の場合は、正に落選した理由を自分の中にあると考え、落胆の中で、その解決策を模索し始めているのです。その結果、自分に足りないものを補おうと海外へ出る決意をしたといいます。そう、今の中村選手があるのは、この時「何が足りないのか」を考え、それを解決するために行動したから。この時が、正に転機といえるのではないでしょうか。

例えば、プロのレベルなら、100%フォークが来ると分かっていれば、大抵は対応できるといいます。しかし、分からないからこそ頭脳戦が必要。相手のピッチャーや自分のクセ、試合の流れなどによって、配球を予測しなければなりません。野村監督は、予測した根拠を明確にし、結果とすり合わせて記録していくということを繰り返し、それが「ID野球」の基礎となったのでしょう。

似たようなことを、ビジネスマンも行っていますよね。例えば、商談のノウハウやナレッジは、顧客のクセや考え方、成功や失敗など、経験を積めば積むほど、身につきます。しかし、多くの場合、これらのノウハウやナレッジは、個人の内側に蓄積され、後輩や部下と共有できていることは少ないようです。そう、ナレッジの属人化が起きているわけです。

一方、野村監督は自身が見いだしたノウハウや理論を可視化して、チームメイトと共有しています。さらに「ノムラの考へ」として、チームを超えて野球のあり方を問うものとして広がりました。これは「書くこと」によって、自身のセオリーを確立したからこそ可能になっているわけです。また、ぶつぶつとぼやく癖がある野村監督ですが、「古田は、あれだけ育てたのに、年賀状もこないなぁ」とか、著書のなかで語ってしまう点が惜しいですね(笑)。でも、惜しいと思いつつ、最近、スポーツ番組でぼやくこの名監督を拝見していると、この種のぼやきもまた、野村ブランドだという気さえします。

それを支えているのは、細やかな観察力と洞察力です。南海のキャッチャーというポジションにこだわったのは、「当時、キャッチャーの人材が薄かった南海なら、チャンスがあると考えたからだ」と述べています。なんと、高校生の頃から些細な情報から状況をキャッチし、どうしたらいいのか考えていたのです。

しかし、考える端から人は忘れるものです。すると、考えの体系化が進まず、大きな枠組みへ展開するのに時間がかかります。優秀なビジネスマンが、必ずしも良いビジネスリーダーになれないことがあるのは、そのせいではないでしょうか。先にもふれたことですが、自分の頭で考える場合、何の気なしに考える人がいますが、偉大な経営者も監督も、考える基になる刺激やインプットがあることを忘れてはいけません。また、いくら深く考えても、言葉にしたり、書いたりしないとだめです。それを励行するだけでも、2、3年経つと、大きな違いが出てくるのではないでしょうか。

人が組織の中で成長していくとき、いくつかの転換期があります。まず、教育期を経て独立したプレーヤー(individual contributor)になり、その後、チームプレーを学び(team member)、後輩ができていくうちに非公式にリーダー(informal manager)として認められ、公式に権力を得る(formal manager)ことによって、名実ともにリーダー(leader)になります。さらに、リーダーを教育するメンター(経験・人脈などが豊富な人)となる人もいるでしょう。この節目ごとに、それぞれの「持論」が必要なのです。

図:いくつかの転換期

「ノムラの考へ」は、一気に書かれたものではないはずです。これまで書いたものを読み返しながら、推敲を重ねて出来上がっていったに違いありません。それくらい、『内側にある持論』を確立し、明文化することは難しいのです。あなたが仕事の中でリーダーとしての成長を得たいなら、考えを検証し、それを記録することから、はじめてみてはいかがでしょうか。

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