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【平成の世にサムライを探して】第131回 東京大学大学院 情報理工学系研究科 特任研究員 博士(環境学)シンデレラ・テクノロジー研究者 久保友香「誰をもスターにできるかもしれないシンデレラ・テクノロジー」

「シンデレラ・テクノロジー」とは、女性が「変身」して新しいアイデンティティをつくり上げる技術を意味する。浮世絵や美人画の研究を経て、自ら名づけたそのシンデレラ・テクノロジーをただ一人研究しているのが久保友香氏である。現代のシンデレラたちに寄り添い続ける女性研究者がめざすものとは──。

人の能力は多様で物差しを変えれば評価も変わる

久保友香(くぼ・ゆか)プロフィール

1978年生まれ。
2006年、東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了。
東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師などを経て、14年より東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員に就任。専門はメディア環境学。

小学校低学年の頃、かけっこが遅く、給食も最後まで食べているような子どもだった。自分は劣等生──。その意識から抜け出すことができたのは、高学年になって塾に通い始め、算数が得意になってからだ。「足の速さ」という物差しでは劣っていた自分が、「算数の問題を解く」という別の物差しでは周囲をしのぐことができることに彼女は気づいた。
「人の能力は多様であって、物差しを変えればその人の評価も変わるということを知りました。私にとって特に重要だったのは、“努力”で結果が変わる物差しがある、ということでした」

東京大学大学院情報理工学系研究科の久保友香氏は、自分の少女時代をそう振り返る。足の速さはおおむね生来の能力で決まってしまう。しかし、算数の能力は努力することでどんどん伸ばすことができる。自分は「努力の物差し」を大切にしたい。幼少の心に抱いたその強い思いが、現在もなお、研究者としての彼女の背骨となっている。

久保友香氏
久保友香氏

大学では理工学部に入った久保氏だったが、社会を変える技術の影響力に興味を持ってエネルギー分野に進み、さらに「これからはハードパワーからソフトパワーの時代になる」という東京大学の月尾嘉男教授の著書の内容にインスパイアされ、東京大学大学院でメディア環境学を専攻することにした。そこで新たな研究テーマとして選んだのが、「日本の伝統文化を数字で解析すること」だった。

「歌舞伎、禅、わびさび、おもてなし。そういった日本特有の文化の特徴を数値的に表現することができないかと考えました。歌舞伎の見得、おもてなしの駆け引きなど、その特徴を示す “物差し”を見つけたいと思ったんです」

その試みはうまくいかなかったが、次に着目した「浮世絵の構図」については、ある程度の法則化に成功した。

「浮世絵の多くは、西洋で発明された遠近法で描かれていません。浮世絵の歴史を調べてみて、日本人が遠近法を知らなかったからではないということが分かりました。ある時期に遠近法が伝わり、浮世絵にも使われるようになったのですが、次第にもとの平行投影とも違うが透視図法にも従わない、独自の構図になっていったのです。つまり、あえて遠近法ではない手法を選んだということです。その日本独自の構図をコンピューターで再現する法則を構築した研究が博士論文になりました」

現代の少女たちを「姫」にする技術

画像を数値的に分析するその手法を応用して次に取り組んだのが「美人画」の研究だった。

久保友香氏

「高松塚古墳の壁画から絵巻や浮世絵を経て今日の漫画に至る日本の美人画の歴史は、“デフォルメ”の歴史です。例えば、江戸時代の美人画を見ると、作者も被写体も違うのに、どれもほとんど同じに見えます。ということは、作者たちはもとの顔をリアルに描いたのではなく、その時代の“型”に沿って、顔をデフォルメして描いたということです」

久保氏は、数多くの美人画に当たって画像の傾向を読み解き、特徴点を見いだして、デフォルメのシンプルなモデルをつくる作業を続けた。その過程で、現代の顔写真を美人画風にアレンジするプログラムの開発にも成功している。

そういう日本の美人画の“デフォルメ”歴史の延長に現代の「プリントシール機」の写真があると気づいたのは、今から6年ほど前のことだ。

ゲームセンターなどに設置された撮影ブースの中で簡単に自分の顔写真が撮れるプリントシール機が登場したのは1995年である。第1号製品であった「プリント倶楽部」の略称から一般に「プリクラ」と呼ばれるようになったプリントシール機は、女子高校生を中心とする若年女性の圧倒的な支持を集め、瞬く間に日本全国に広がっていった。

瞬く間に日本全国に広がっていったプリントシール機
瞬く間に日本全国に広がっていったプリントシール機

当初からフレームやスタンプなどを選んで写真をデコレートすることが可能だったプリントシール機だったが、その機能は徐々に進化し、被写体の肌や髪の色を調整したり、目を大きくしたりする機能を備えるようになった。若い女性の間には、そうして「加工」された自分の顔写真をインターネットで公開し、互いに評価し合う文化が根づいていった。

プリントシール機で撮られた顔写真はデフォルメされていて、しかもそこには一定の「型」がある。つまり、加工された現代の少女たちの顔は、日本の美人画の歴史の流れの中に正確に位置するということだ。その「型」を基準とした物差しを見つけることが、久保氏の次のテーマとなった。

西洋の童話に登場するシンデレラは、魔法の力によって美しい姫に変わった。現代の少女たちは、最新の技術の力によって魅力的な顔を獲得し、評価を得る。ごく普通の少女たちをチャーミングな姫に変えるその技術に、久保氏は「シンデレラ・テクノロジー」と名づけた。

シンデレラ・テクノロジーには3つの分野があると久保氏は言う。1つ目は、画像処理によって被写体を加工する技術で、プリントシール機はこれに該当する。スマートフォンのアプリなども同様の技術で、久保氏は「セルフィーマシン」と呼ぶ。2つ目は、そうして撮影した画像の共有を可能にするコミュニケーション技術である。FacebookなどのSNSがその代表的なものだ。そして3つ目が、加工された画像をできるだけリアルに再現するコスメグッズである。つけまつげやカラーコンタクトレンズなどを含むそのグッズを、久保氏は「プラスチックコスメ」と呼ぶ。

顔の画像が加工され、インターネットで共有され、さらにその加工が実際の相貌に反映される。その一連のプロセスを久保氏は、「バーチャル・アイデンティティ」と「リアル・アイデンティティ」という言葉で説明している。

久保友香氏

「今では誰でも実際の自分とネット上の自分という2種類の自分を持っています。実際の自分が“リアル・アイデンティティ”、ネット上の自分が“バーチャル・アイデンティティ”です」

重要なのは、どちらのアイデンティティも「自分自身」であるということだ。バーチャルの世界で人気を集めている女性たちに、久保氏はインタビューをしたことがある。どうして熱心に自分を加工しようとするのか? その問いに、少女たちはしばらく考えた後で一様にこう答えたという。「自分らしくあるため」──。

「プリクラで撮影した女の子たちの顔は、一見するとみな同じように見えます。しかし実際には、彼女たちは努力と工夫を重ね、他の人との微妙な差異を生み出し、それを“自分らしさ”としています。それはとても高度な作業であり、自分の表現をするにもまずは“型”を守ることを重視してきた日本の伝統に根づいたものである。そう私は考えています」

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