3ページ目|第三回「鈴木明子選手が五輪代表になるために活路を見出した理論とは」|脳が変わればビジネスも変わる 脳医学者 林成之の成果を生み出す勝負脳講座|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

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脳が変わればビジネスも変わる 脳医学者 林成之の成果を生み出す勝負脳講座

第三回「鈴木明子選手が五輪代表になるために活路を見出した理論とは」

違いを認めて生きる第三の本能

 もともと人間は、「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」という3つの本能的な欲求を持っています。それは人間の1個1個の細胞レベルでの欲求です。その細胞が集まって脳の組織をつくり、嬉しいとか悲しいといった感情や論理的にものごとを考えるしくみを生み出す過程で、また別の本能が生まれました。それがこの「統一・一貫性」や、「自己保存」などの本能です。前回出てきた「自己報酬神経群」もそうですね。

 このように、人間の本能は、先天的な細胞由来の本能と、後天的な組織由来の本能という、二重構造になっています。たとえば、細胞由来の「仲間になりたい」という本能に従って、一緒に仕事をしている人や会社を好きになりながらも、仲間から意地悪をされたりすると、自分を守りたいという「自己保存」の本能が働き、そこにギャップが生まれます。この相反する感情を調整する機能を、私は「ダイナミック・センターコア」と名付けたわけです。ここで「違いを認めて共に生きる」という第三の本能が生まれました。この第三の本能が働くことで、二重構造から生じたズレや矛盾、相反する感情の調整などが可能となるのです。

 こうした本能をビジネス社会に当てはめると、自分たちに会社が利益を上げるだけでなく、取引先も儲かる、お客さんも得をする、というのが、脳の本来求めているビジネスのあり方です。自分さえよければいい、というのは、脳が求めているものではありません。「共に生きる」というのが脳の求める本能の基本形ですから、自分がいい思いをするのと同時に、相手もいい思いをする。そういうビジネスを脳は求めています。

 ところが、現実のビジネス社会では、成果主義という言葉もあるように、どうしても自分さえ成果を挙げればいい、自分が勝てばいい、という風潮になってしまっています。しかしそれは、脳が本来望んでいないシステムなのですから、長い目で見ればけっしてうまくいかなくなるでしょう。ビジネスは脳の機能を理解したうえで行わないと、多くが失敗します。

 また、強い組織をつくるためには、「統一・一貫性」という本能をよく理解することも大事です。「統一・一貫性」は、整ったもの、秩序だったもの、筋の通ったものを好む性質ですから、組織の全員が一つの目標に向かって進むのもこの本能によるものです。組織内での規律を守らせるのにもこの本能を使うとうまくいきます。

リーダーは自分と異なる意見も認めよう。
リーダーは自分と異なる意見も認めよう。

 しかし、ややこしいことに、本能にはプラス面とマイナス面とがあって、この「統一・一貫性」の本能も、ときには外さなければならないこともあるわけです。たとえば、自分とは反対の意見を言う人がいたら、その人に対して嫌悪感を覚えますよね。これも「統一・一貫性」が崩れるのを脳が嫌がるからだと考えられます。冷静に考えれば、意見が異なるからといって、その人そのものを嫌いになる必要はないはず。そのことを「違いを認めて共に生きる」という第三の本能で理解できれば問題はないのですが、現実にはなかなかそうはいきません。脳の「統一・一貫性」の本能は非常に強固だからです。こうした組織では、往々にして異なる意見を持つ人が排除されることになります。リーダーの発言に対して反論を唱えた部下のこともきちんと認めないといけません。しかし、人間には「自己保存」の本能があるので、リーダーもついついその部下を否定しがちです。すると他の部下もリーダーに同調してしまう。リーダーはその危うさを十分に理解しておかなければならないのです。正しさを認識する脳のメカニズムにも、間違う仕組みがあらかじめインプットされているのです。


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