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読解力・表現力養成講座

文書はタテヨコに読み直せ

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簡単そうに見えても、現実の仕事の中でこれをやろうとすると非常に難しいと感じるはずです。やること自体は単純なのですが、この作業で問われているのは結局のところ文章読解力です。そして、多くの社会人の文章読解力はそれほど高くありません。また、元の文書自体があいまいで、「マトリックス化」に必要な情報がきちんと書かれていなかったりするケースが非常に多いのです。

実際、筆者がこの種のもう少し難しい問題を研修で出題したとき、「なかなか、日本語がきちんと読めていないんだな……」と予想以上に低い正答率に驚いたものでした。

読解力が低いと、たとえば図5のような解答をしてしまいます。

ラーメンのスープの流行(間違いの例)
図5:ラーメンのスープの流行(間違いの例)
 
図5:ラーメンのスープの流行(間違いの例)

この例では、本来「素材」に書くべき「鶏ガラ」を傾向のところに書き、空いた「素材」欄には「しょうゆ」と「脂」を対比させています。「鶏ガラ(素材)」→「こってり(味の傾向)」という、違うものを比較する結果になってしまっているわけです。実際にビジネス上の複雑な問題についてマトリックスを作らせると、もっとずっと混乱した結果になることが珍しくありません。

人によっては、こんなマトリックスを作ることもあります(図6)。

ラーメンのスープの流行(間違いの例)
図6:ラーメンのスープの流行(間違いの例)
 
図6:ラーメンのスープの流行(間違いの例)

正答例と比べると「素材」と「傾向」をひとつにまとめてしまっただけですが、これも問題です。この例では、前出の正答例にあった「?」がなくなってしまいました。正答例では、「最近の素材については原文には書かれていない」ということが「?」という空白セルの存在で一目瞭然にわかります。しかし、素材と傾向をひとつにまとめてしまうとその空白がなくなってしまうため、情報が不足していることに気がつきにくくなります。どうしてこうなってしまうのでしょう?

この解答を見ると素材と傾向を「流行」としてまとめていますが、実は原文には「素材」も「傾向」もありません。代わりに「流行」の文言があります。つまり、この解答を作った人は、マトリックスの項目ラベル(見出し)になるような「素材」「傾向」という切り口を見つけることができず、代わりに目についた「流行」という一言だけを使ってマトリックス化したわけです。抽象概念を扱う能力が低いと、こうした間に合わせをしてしまいがちです。「切り口」を自力で発見できないので、すでに書かれている言葉を強引に使って間に合わせるわけです。これでは新たな問題点や情報の不足を発見できません。そして結果的に、問題解決能力を低下させてしまうのです。

このように、マトリックス化をすると「読解」の過程で起きる「情報のゆがみ」が表に出てきます。自分でもそれに気がつきやすくなるし、他人が見ても「あ、誤解しているな」ということがわかりやすくなるため、その時点で適切な指摘をもらえる確率が上がるわけです。

まとめると、マトリックスは以下のようないくつもの効果を得られる、それでいてシンプルで応用範囲の広い方法なのです。

  • 自分の日本語力(読解力、表現力、とくにボキャブラリー)の検証
  • 情報のゆがみの発見と修正
  • 原文段階での情報不足の発見
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